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魔法使いの夜 感想

2019-07-30

正直あ、出るんだ、あ、マジで出たんだ的な印象が強かったType-moonの新作ADV・魔法使いの夜。携帯ゲーや外伝に興味無い私からするとホロウから苦節7年。もう7年だよきのこ。嬉しくって楽しくって・・・悲しかったよ。
 
 
 
さて、内容ですが、今作は鬼哭街とかひぐらしなどのように選択肢のない、いわばビジュアルノベルというジャンルになります。シナリオを進めるに連れてサブストーリーを楽しめたりといった、寄り道的なテキストはあるものの基本的には一本道。物語にひたすら没頭したい私にとってはこれは良い点に値するのですが、やはり賛否両論。ルート分岐がないことは全体的なボリューム不足にもつながり、大体15時間程度のシナリオとなっています。(+番外編2~3時間)

 
ただし、そのシナリオを補助する役目であるグラフィック。通常想像するいわゆるギャルゲーエロゲーの紙芝居と比較すると、立ち絵の使い方やら背景やらBGMやらの演出面では他を圧倒するクオリティです。どう表現していいかわかりませんが、ageのAGESすら見劣りしてしまう程のレベルです。あそこまで演出に拘るならもう最初からアニメ作品として作った方がいいんじゃね?って意見もありそうですが、そうじゃない。あくまでもノベルゲームとしてのテンポを保ったまま、どう演出するかを突き詰めた感じ、とでもいいますか。
 
 
 
批判覚悟で断言しますけど、あの演出あってこその魔法使いの夜であり、演出拘らなくていいからボリューム増やしてくれ的な意見には賛同出来ません。多分原本である小説版・魔法使いの夜での遊園地のシーンと本作の同じシーンでは全く印象が異なると思います。文字だけでは表現出来ないものが確実にありました。
 
BGMはクラシックアレンジを始め穏やかな曲が多めでしたが、ここぞという時は盛り上がる曲もあり、音質も上々でType-moon作品では初めてサントラが欲しくなりましたね。FIVEとか最高ね。

総評:8点

以下ネタバレありの感想となりますのでご注意をば。

 

と、本格的に私的な感想を述べる前にとりあえず、先に世間一般で言われる悪い点だけ挙げときましょうか。

 
2年以上の延期。全年齢対象でボイス無し。選択肢無し。長い開発期間に見合わないボリューム。そしてこれは後で知ったんですが、3部作らしいこと。事前情報だけでもこれだけの不安材料を抱えていました。
 
 
そしてType-moonファンであるならばもちろんのこと、私程度のにわかファンでも「魔法使いの夜」がどういった内容の物語なのかはある程度想像がついています。空の境界、月姫、Fateよりもさらに昔の原作であり、それぞれのキャラクターたちの原型があること。青子がどうも学生時代、美少年に首輪をつけてペットにしてたらしいこと。史上最大の姉妹喧嘩があったらしいこと。この辺の情報から展開はある程度読めちゃうんですよね。
 
逆に言えば、Type-moon作品に初めて触れるのであれば不満点には成り得ないのですけど。
 
 
で、キャラの原型と言いましたが、まほよにおける青子は、鮮花や秋葉、そして凛へと受け継がれるヒロイン像まんまです。というかぶっちゃけ殆ど凛ですよねw 主人公というか、なんだ・・・ヒロイン?というんだろうか草十郎もまたコクトーやら士郎やらの原型とも言える要素を持ち合わせています。有珠は・・・まあこれといった元は無いのかも知れませんが、翡翠とカレンを足して2で割ったような?イメージでしょうか。なんか違う気もしますけどw
 
このようにキャラクターの個性という意味でも、別段特別なことはないんですよね。
 
 
さらに、当時はそんな言葉なかったとはいえ、月姫、Fateと言えば厨二病の代表ゲームとしてよく挙げられ、近年ではその患者が主なファン層になっていたはずです。まほよにはその点がいささか足りない。これは私的には不満点ではないのですが、Fateみたいなものを求めていた人には致命的でしょう。
 
 
 
と、こんな感じでネガティブに見れば、叩かれる要因が山ほどあります。これは長年待ち続けたType-moonファンならば至極当然の意見であり、擁護出来ない部分は確かにあります。
 
 
 
ただね、7年待っただとかの先入観を捨てて、これが新規メーカーの作った新しいADVゲームだったとしたらどうか。これって物凄い作品じゃないですかね?フルプライスゲーとして確かにボリューム不足感はあるもののそれを補って余りある内容。シナリオの展開に奇をてらったものがないため、退屈に感じる人もいるでしょうが、良く言えば卒なく纏まっているとも言えるわけで。
 

基本的な流れは王道のボーイ・ミーツ・ガールですよ。青春ジュブナイルモノですよ。好いた惚れたまでもいかないような、友情なんだかもよく分からない甘酸っぱい3人の関係を描いた作品です。魔術合戦になるといつものきのこ節が炸裂しますが、日常シーンでは小説寄りの随分と洗練されたテキストがそこにあります。

あと珍しくテーマ性が感じられましたね。オブラートに包んではいるものの、絶滅してしまったリョコウバト・マーサの話や草十郎視点で見る現代の世界。世界の神秘が次々と解明され、魔法と呼べる奇跡は数えるほどになってしまった現代の魔術師の黄昏。その辺りが対比されて上手くテーマにしていたと思います。

 
 
 
あーつまりこの作品って多分、Type-moonファン向けに作られていないんだな。作中で、ファンがニヤリとできるような描写もいくつかありましたが、それはそれ。本作の方向性はFateはもちろん月姫とも違うと思う。魅力的な世界観を解説したり、ヒロインと協力して敵を倒したりって要素もありますが、それが軸じゃない。本作においてそれらはあくまで舞台設定に過ぎないところが今までの作品との大きな違いな気がしますね。
 
強いて言うならそういう方向性の「魔法使いの夜」は原本小説が該当していたのかも知れません。真実はわかりませんけど、本作は限られた人間にしか見ることが叶わなかった原本を、現在の奈須きのこ氏が書き直したものであると思います。10年以上も経って、彼の思想や価値観、描きたいものも変わって、それを詰め込んだのが今作なんじゃなかろうか。
 
 
 
で、結局どうだったの?という話になると、これはもうすっげー面白かった!という感想になってしまいます。VS有珠in遊園地とか青の魔法解放シーンとかエンターテイメント性に優れた点もありますけど、それ以上に私はこの作品の雰囲気だとか情緒とか読了後の余韻がすごく琴線に触れました。魔術戦などの激しい描写もさることながら、一方で古の洋館でひっそりと穏やかに流れる時間がたまらなく心地良いのです。本編のエピローグとかもうなんか愛しすぎるよね。
 
草十郎の記憶を消すための忘却のルーンについて書かれた魔術書を見つけた青子は、草十郎が水族館に誘ったあの日、その分厚い本が有珠の手にあったことを思い出す。そして少しだけ見つけにくい棚の上にそっと戻す。いつか終わりを迎える日々を少しだけ先延ばしに。ああ、もう野暮ですけど、忘れたくないので文章に残しておきますw
 
 
主要人物の青子、草十郎、有珠も個性という意味では今時の作品の中では埋もれてしまうようなキャラクターかも知れませんが、嫌味がないんですよ。これといった会話が無くても居間で3人でお茶飲んでるシーンを想像するだけでほっこり出来るのですw なんだかんだいって青子も有珠も甘いですからね。どうしても非情に成りきれない人間性を抱えている。大事な宝石を赤の他人のために使っちゃったり、最後の最後で桜を抱きしめちゃう凛みたいに。非日常の世界に身を置く魔術師のくせに人間臭い人間の多いこと多いこと。だからこそ魅力的なんですがね。
 
というかそもそも草十郎に振り回されっぱなしの青子はふつーに可愛いし、稀に微笑を見せる有珠とかなんというかあざといぐらい可愛いし、別段文句はなかったんですけどね。
 
 
 
 
総評。文句はあるが名作。というか個人的に好きな作品といった感じですね。演出面では比肩するものがない。ボリュームは不足という意見が多数。私的にはちゃんとキャラクターが描かれてて、きちんと完結していれば、これぐらいのボリュームでも十分なんですけどね。Type-moonというブランドネームや発売に漕ぎ着けるまでの経緯などの先入観を捨てされば、十分に名作と言える作品です。
 
 
いやはや今の時代に逆向するような硬派なゲームでしたよ。一応ギャルゲー?に位置しながらも、ヒロインと同居しておきながらラッキースケベはおろかパンチラの一つすらないんですからw ベオへのハイキック時だってスパッツ常備よ?いや、本当に余程の自信か矜持でもない限り、こんな作品は作れないとおもいますよ、今日日。こういう作品を作れるのってエロゲメーカーでは本当に数えるほどしかいないと思います。
 
 
批判するのもわからいでかですが、少し冷静になって欲しい。本来何年待っただとか、前作と比べるとどうだ、というのは作品単体の評価点とはならないはず。世界観は共通であるものの、魔法使いの夜自体は単体できちんと完結しています。(少なくとも私はそう思っています。) シナリオの雰囲気が合わなかったり、展開が気に入らなかったりで評価を下げるのはもっともだと思いますが、Type-moonの作品としては、とかFateの続編としてはという理由で酷評を受けるのは、なんだかいたたまれないですね。いや、まあ待ちに待っていた人の気持ちも分かるのですが、いくらなんでも100点満点で10点がついちゃうようなゲームじゃないだろう、と。
 
なんか完全に擁護派になっちゃってますけど、これも多分私が本作を気に入っちゃったからなんだなあ多分w
 
ついでに言うと慌ててプレイせずゆっくりと世界に浸って欲しい。演出のトロさにテンポ悪く感じる人もいるでしょうが、あの速度でちょうどいいように設定されている、と思う。どうせボリューム少ないんだからたっぷり楽しもうぜという話ですw なんか微妙な薦め方ですけど。
 
 
 
しかし続編は書こうと思えばいくらでも書けそうだし、実際原本は3部作らしいのですが、ぶっちゃけ必要か?とも思います。主人公の青子の魔術は今作で第5魔法含めて出しきってしまったし(10年後の魔術すら)、有珠だって所有するプロイの大部分がネタバレしちゃいました。新たな魔術師との戦いを描くのもいいですけどそれって面白いかなあ。少なくとも今作以上に盛り上がる気がしないのだけれど。本作で蒼崎青子という人物の根源は書ききったし、月姫における志貴との出会いまでの空白は、各自想像で補完する程度でいいんじゃなかろうか。というか10年後の青子が顕現した時点で埋まったといってもいいんじゃね。
 
 
ファンディスク的なゆるっゆるな日常をダラダラ描く作品だったら正に俺得でウェルカムなんですが、本当に俺得でしかない気がしますし、世間的にw 
 
あれだ、本編で皆無に等しかったイチャラブ要素を入れてくれてもいいのよ?・・・あーでも野暮かなあ。野暮だよなあ。なんというか本編で結ばれるまでいかなかった男女が続編でイチャイチャってのはなんか違う気がしますね。やっぱり後はご想像にお任せします、でいい気がする。いや、まあグリザイアの雄二と麻子みたいに健康的に爛れた性生活を送るというのもアリっちゃアリですがw
 
 
まあ、とにかく私的には大好きな作品の一つになったのでした。月姫プレイしたのがもう10年以上前。志貴の先生だった蒼崎青子の活躍を描いた「魔法使いの夜」なる作品が存在することを知ったのもその頃。その物語がついに発表されたってだけでも、本当に感慨深く涙モンだったはずなんですよ。ホロウからFate関係に付きっきりで全然新作が製作されることもないType-moonにやきもきしたり、DDDが続き出なかったりで複雑な感情抱きながらも、いざ発売となればそりゃあ嬉しかったものです。
 
で、やっぱりType-moonの作品は好きだった。きのこ氏のテキストが好きだった。あの世界観が好きだった。それを思い出させてくれました。

 
そんな訳で 俺 は 大 好 き だ ―!!
 
 

 
追記:本編終了後の番外編も終えました。内容は・・・なんというかファンディスク的な感じというか、ないよりはマシなのかも知れませんが、本編の余韻がちと台無しになってる気もしたりw 金鹿視点なのが救いでしたかね。本編後の青子と草十郎、有珠の関係ってなんとなく想像に留めておきたかったんですよ、正直なところ。だから金鹿視点では普通に見えても実は裏でラブラブだったりするのやもという妄想の余地が残されているのでギリギリOKといったところですw
 
内容はなんかかまいたちの夜を彷彿とさせるような選択肢と次々と起こる殺人事件。というかシュプールとかいってましたし完全にパロディでしたねw しかし真犯人はバレバレなのに途中の推理で外してると根拠が無くて追い込めないという、中々辛い仕掛けでした。そこそこ楽しめたので良いんですけどね。それにしてもリデルみたいな新キャラをあそこで出してくる必要があったのかしらん。
 
まあ橙子さんのまさかのへべれけと青子のまさかのバニー姿が見れたので私的には満足しましたけどね!

 

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